インターネットの正体は『水曜どうでしょう』だった。あなたのデータは「大泉洋」としてサイコロを振り、寄り道の末に目的地を目指している

AI・テクノロジー

私たちがブラウザで検索ボタンを押したとき、あるいはSNSのタイムラインを更新したとき。画面の向こう側では、光の速さでデータが目的地まで「直通」している――そう思っていませんか?

しかし、現実はもっと泥臭く、もっと理不尽で、もっとスリリングです。実は、インターネットの仕組みは、あの人気番組『水曜どうでしょう』の伝説的な企画「サイコロの旅」と驚くほど似ています。

「インターネットの仕組みはほぼ水曜どうでしょうということで」

こう断言されると、「いやいや、テクノロジーの最先端がそんな行き当たりばったりなわけがない」と笑うかもしれません。しかし、エンジニアたちが何十年もかけてたどり着いた通信の最適解は、まさに「寄り道だらけの旅」だったのです。

本記事では、難解なネットワークの仕組みを「パケット=大泉洋」という比喩で徹底解剖します。読み終える頃には、サイトの読み込み待ち時間さえも、壮大な旅のエンディングを待つ感動に変わるはずです。

今回の配信内容🎧

  • インターネットは「直行便」ではない?あえて寄り道をする「サイコロの旅」の合理性。
  • 複数のアプリを同時に動かす魔法、回線を細切れにシェアする「パケット交換方式」。
  • 通信データを「100人の大泉洋」に見立てる、パケットの過酷な冒険ドラマ。
  • ルーターでの「圧死」:データ通信の失敗が、なぜドラマチックなのか。
  • 通信障害の裏側で起きている「藩士(パケット)」たちの奮闘を知る。

インターネットは「直行便」ではない?最適解はサイコロの旅

私たちがウェブサイトのリンクをクリックしたとき、多くの人は自分のデバイスから目的地(サーバー)へ、専用のトンネルを通って一直線にアクセスしていると考えがちです。しかし、堀本氏は「それは素人の浅知恵だ」と断言します。

「何十年も技術者たちがいろいろ考えてたどり着いた最適会がサイコロの旅なんですよ」

想像してみてください。東京を出発して札幌を目指しているのに、サイコロの出目次第で金沢へ飛ばされたり、時には四国や九州へ戻されたり……。インターネットのデータもこれと同じように、世界中に網の目のように張り巡らされた「ルーター」という拠点を経由しながら、その時々で空いている道を勝手に見つけ、目的地を目指しているのです。

なぜこんな面倒なことをするのか。それは「一箇所が通行止めになっても、別の道で目的地に行ける」という、有事への強さを求めた結果です。効率よりも、何があっても届けるという「しぶとさ」を選んだ。これこそが、かつて軍事技術から始まったインターネットの真髄なのです。一直線の道は、そこが壊れたらおしまいです。しかし、寄り道を許容する「サイコロの旅」なら、どこかが壊れても、回り道をしていつかは目的地に辿り着けます。つまり、インターネットの通信とは、一直線に目的地へ向かうことではなく、複数の拠点を経由する「寄り道」を前提とした、極めて頑強な仕組みそのものなのです。

電話との決定的な違い:なぜ一斉に複数のアプリが使えるのか

かつての固定電話は「回線交換方式」という仕組みを使っていました。これは、通話中の2人の間に専用の線を一本引いて占有してしまうようなものです。通話中は他の人が割り込むことはできず、回線は完全に二人だけのものになります。

もしインターネットがこの方式だったら、誰かがメールを一通送っている間は回線が「占有」され、他の人はSpotifyで音楽を聴くことも、Discordでチャットをすることもできなくなってしまいます。現代の私たちが、マルチタスクでネットを楽しめるのは、データを「パケット(細切れ)」にするという革命的なアイデアがあるからです。

「1秒のうちなんか分かんないけど0.001秒でなんか受信して、よし十分な量足りたなって思ったら、後は使ってないわけです。ネットワークを」

高速な回線をミリ秒単位の短時間で細かく区切り、その隙間に順番に違うアプリのデータを流し込んでいく。この「パケット交換方式」によって、一本の道をみんなで効率よくシェアできるようになりました。実際、一つのメールを送るのにも数千個のパケットに分かれます。それが目にも止まらぬ速さで交互に流れるため、人間にはまるで「一斉に通信している」かのように見えているだけなのです。このように、通信をパケット単位で細分化し、回線を「時間貸し」でシェアすることで、私たちは複数のアプリやユーザーと一本の回線を同時に、そして賢く使いこなせているというわけです。

「パケット」は「大泉洋」?100人の分身が繰り広げる冒険ドラマ

この細切れにされたデータの単位を「パケット(小包)」と呼びますが、教科書的な説明ではどうしても無機質に聞こえてしまいます。そこで、パケットを『水曜どうでしょう』のメイン出演者「大泉洋」に例えてみましょう。

一つのウェブサイトを表示させることは、「水曜どうでしょうシーズン100まで見るみたいなイメージ」です。リンクをクリックした瞬間、データは100人ほどの大泉洋に分割され、一斉に目的地へ向かって旅立ちます。

  • 100人の大泉洋(パケット)がそれぞれ違うルートで目的地を目指す。
  • 順調に東北を北上する大泉洋もいれば、なぜか九州に飛ばされて迷子になる大泉洋もいる。
  • 全員が目的地に揃って初めて、ウェブサイトという「一つの番組(データ)」が完成する。

例えば、サイトの画像だけ表示が遅いことがありますよね。あれは、その画像を構成するために必要な「30人の大泉洋」が、どこかの県境で猛吹雪に遭って足止めを食らっているからなのです。あるいは、最後の一人がなかなか到着せず、画面が固まってしまう。インターネットの裏側では、常にこうしたドラマが起きているのです。つまり、一つの大きなデータは、決して塊のまま動くのではなく、大量のパケット(大泉洋)に分けられ、別々のルートを通って目的地で再合流する。この「分散と再集合」のプロセスこそが、私たちが目にするデジタル体験の正体です。

ルーターは「深夜バス」より過酷?パケットが直面する“圧死”という悲劇

データの旅は決して安全なものだけではありません。中継地点である「ルーター」には、世界中から膨大な数のパケット(大泉洋)が集まってきます。しかし、ルーターの処理能力には限界があります。

あまりに多くの大泉洋が一箇所に集中しすぎ、ルーターの処理待ち行列に並びきれなくなると、どうなるか。ルーターは非情です。溢れたパケットをためらわずにゴミ箱へ捨てます。これを、番組内での大泉氏の不遇な発言になぞらえて「圧死(パケットロス)」と呼びます。

「パケットが一箇所のルーターに集まりすぎて待ち行列に入らなくなって死んでしまう圧死を意味しています」

正直、ルーターに情けはありません。どんなに重要なメールの破片であっても、行列に入れなければ「死」あるのみ。これがパケットロスの正体です。パケットが圧死すると、送信側は「あ、届いてないな」と判断して、再び新しい大泉洋を旅立たせます。ネットが遅いのは、裏側で大泉洋たちが何度も圧死し、そのたびに再出発を繰り返しているからなのです。私たちが感じる通信の遅延や失敗は、こうした中継地点でパケットが溢れて「圧死」してしまうことで引き起こされます。それはまさに、ネットワークを全員で共有するという仕組みゆえに避けられない、残酷な宿命とも言えるでしょう。

まとめ:ブラウザの向こう側に旅の余韻を

この記事をまとめると…

  • インターネットは「直行便」ではなく、複数の拠点を経由する「サイコロの旅」のようなしぶとい仕組みである。
  • データを「パケット(細切れ)」にすることで、一本の回線をみんなでシェアできる「パケット交換方式」を採用している。
  • パケット(大泉洋)はバラバラのルートで旅をし、最後に目的地で再合流して一つの情報を形作る。
  • ネットワークが混雑すると、パケットはルーターで処理しきれずに「圧死」して消えてしまう。

「インターネットの仕組みはほぼ水曜どうでしょうということで」。
私たちが今、こうして快適にサイトを見られているのは、裏側で何千、何万というパケットたちが、「ここどこだよ!」と叫びながら、ボロボロになって目的地を目指した「執念の旅」の結果なのです。

次にブラウザの読み込みが遅くて砂時計が回ったときは、イライラするのを少しだけ我慢して、「あ、今サイコロ振ってるな」「あいつら四国で道に迷ってるな」とニヤリとしてみてください。それが、インターネットという壮大なエンターテインメントの真理を知る者の余裕というものです。

配信元情報

番組名:ゆるコンピュータ科学ラジオ
タイトル:インターネットの仕組みは『水曜どうでしょう』と同じ【ネットワーク1】#16
配信日:2022-04-17

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