
インターネットでWebページを開くとき、裏側では何が起きているのか。
「HTTPSで接続して、TCPで通信して、IPアドレスで宛先を指定して、MACアドレスでデータを届ける」——こんな話を聞いたことがあるかもしれない。これらはバラバラな話ではなく、全部つながっている。
手紙を送る手順に例えると理解しやすい。手紙(内容)を封筒に入れて、封筒を袋に入れて、袋を宅配箱に入れて、宅配業者に渡す。それぞれの「箱」が担当する役割は違うが、全部が揃って初めて相手に届く。この「役割を分けて順番に包み込む」という構造が、OSI参照モデルだ。
この記事でわかること
- OSI参照モデルの7層がそれぞれ何を担当しているか
- TCP/IPモデルとOSIモデルの対応関係
- 「カプセル化」とは何か、手紙の比喩で理解する
- 実際のHTTPS通信で各層が何をしているか
- 高校情報Ⅰ・ITパスポートでよく出る問題パターン
なぜ「層」に分けるのか:役割を分担する設計思想
📌 要点:通信をいくつかの「層」に分けることで、各層が自分の担当だけに集中できる。ある層を変更しても他の層に影響しない。この「役割の分担と独立性」がOSI参照モデルの設計思想の核心。
「なんでそんなに細かく分けるの?」という疑問は正しい。理由は役割を分けると変更が楽になるからだ。
宅配の例で考えよう。「手紙の内容(何を伝えるか)」と「宅配会社の配送ルート(どう運ぶか)」は別の話だ。配送会社がヤマトから佐川に変わっても、手紙の内容は変わらない。逆に手紙の内容を変えても、配送の仕組みは変わらない。
ネットワークも同じだ。アプリケーション(例えばブラウザ)は「どのIPアドレスにパケットを送るか」を気にしなくていい。それは下の層が担当する。下の層はアプリが何のデータを送っているかを気にしなくていい。この「知らなくていいことを知らなくていい設計」が、OSIモデルの価値だ。
OSI参照モデルの7層:それぞれが担当する役割
📌 要点:OSI参照モデルは第1層(物理層)から第7層(アプリケーション層)まで7つの層に分かれる。データを送るときは第7層から第1層へ「包み込みながら」降りていき、受け取るときは第1層から第7層へ「開封しながら」上がっていく。

上から下へ、役割と担当する処理を整理しよう。
| 層番号 | 層の名前 | 担当する役割 | 手紙の比喩 | 代表的な プロトコル |
|---|---|---|---|---|
| 第7層 | アプリケーション層 | ユーザーが直接使うサービス | 手紙の内容を書く | HTTP, HTTPS, FTP, SMTP |
| 第6層 | プレゼンテーション層 | データの形式変換・暗号化 | 内容を暗号化・圧縮する | TLS/SSL, JPEG, MP4 |
| 第5層 | セッション層 | 通信の開始・終了・管理 | 「この手紙はどの会話に属するか」の管理 | — |
| 第4層 | トランスポート層 | データの分割・再組み立て・確実な配送 | 封筒に入れて番号を振る | TCP, UDP |
| 第3層 | ネットワーク層 | 宛先への経路選択(ルーティング) | 宛先の住所(IPアドレス)を書く | IP, ICMP |
| 第2層 | データリンク層 | 同じネットワーク内の機器間の通信 | 配達担当者(MACアドレス)を書く | Ethernet, Wi-Fi |
| 第1層 | 物理層 | 電気信号・光信号の送受信 | 実際にトラックで運ぶ | 光ファイバー, 無線 |
試験で狙われる重要ポイントは、第4層のTCP/UDPと第3層のIPの違いだ。
- TCP(Transmission Control Protocol):「確実に届けること」を保証する。届いたか確認しながら送るため信頼性が高いが少し遅い。WebページやメールなどはTCPを使う
- UDP(User Datagram Protocol):確認せずにどんどん送る。少し届かなくても問題ない場面(動画ストリーミング・ゲームなど)で使う。速いが信頼性は低い
TCP/IPモデルとの対応:実務で使われる4層構造
📌 要点:OSIモデルは7層だが、実際のインターネットはTCP/IPモデル(4層)で動いている。OSIの第5〜7層が「アプリケーション層」に統合されるなど、実用向けに整理された構造になっている。

教科書ではOSIの7層が詳しく説明されるが、実際のインターネットで使われているのはTCP/IPモデル(4層)だ。
| TCP/IPの層 | 対応するOSIの層 | 主なプロトコル |
|---|---|---|
| アプリケーション層 | 第5〜7層 | HTTP, HTTPS, FTP, DNS, SMTP |
| トランスポート層 | 第4層 | TCP, UDP |
| インターネット層 | 第3層 | IP, ICMP |
| ネットワークインターフェース層 | 第1〜2層 | Ethernet, Wi-Fi |
「OSIは理論的なモデル、TCP/IPは実際に動いている仕組み」と覚えておくといい。試験でもこの対応関係はよく問われる。
カプセル化:包み込みながら送り、開封しながら受け取る
📌 要点:データを送るとき、各層は自分の「ヘッダー情報」をデータの前後につけて下の層に渡す。これをカプセル化と呼ぶ。受信側は逆に下の層から順に開封していく。この包み込みと開封が通信の本質。
ブラウザからWebサーバーにHTTPSリクエストを送るとき、データはこう「包まれていく」。
【送信側:上から下へ包み込む】
アプリケーション層: 「GET /index.html HTTP/1.1」というHTTPリクエスト
↓ TLSで暗号化(プレゼンテーション層)
トランスポート層: 「TCPヘッダー(ポート番号など)」+ 暗号化データ
↓ TCPセグメントとして下へ渡す
インターネット層: 「IPヘッダー(送信元・宛先IPアドレス)」+ TCPセグメント
↓ IPパケットとして下へ渡す
NI層: 「MACアドレスヘッダー」+ IPパケット
↓ 電気信号・光信号に変換してケーブルや無線で送出
【受信側:下から上へ開封する】
物理層で受け取った信号
→ MACアドレスを確認して自分宛か判断(データリンク層)
→ IPアドレスを確認して宛先確認(ネットワーク層)
→ TCPで再組み立て(トランスポート層)
→ TLS復号(プレゼンテーション層)
→ HTTPリクエストの内容をWebサーバーが処理(アプリケーション層)
各層が自分の担当だけを処理して次に渡す。宅配業者が「手紙の内容」を知らなくてもいいのと同じように、IPルーターは「これがHTTPS通信かUDP通信か」を知らなくても荷物を届けられる。
実際の通信で何が起きているか:HTTPSを例に
📌 要点:URLにアクセスしてからWebページが表示されるまでに、DNS解決・TCPの接続確立(3ウェイハンドシェイク)・TLSハンドシェイク・HTTPリクエストの送受信という複数のステップが順番に起きている。
「https://example.com にアクセスする」という一動作の裏側はこうなっている。
① DNS解決(アプリケーション層)
「example.com」というドメイン名をIPアドレスに変換する
→ 93.184.216.34 などのIPアドレスが返ってくる
② TCPの3ウェイハンドシェイク(トランスポート層)
SYN → SYN-ACK → ACK の3回のやり取りで接続を確立する
「通信していいですか?」「いいですよ」「ありがとう」のやり取り
③ TLSハンドシェイク(プレゼンテーション層)
公開鍵暗号で共通鍵(セッション鍵)を交換する
以降の通信はこの共通鍵で暗号化される
④ HTTPリクエスト・レスポンス(アプリケーション層)
「GET /index.html」を送る → サーバーがHTMLを返す
⑤ TCPの接続終了
FIN → FIN-ACK → ACK の3回で接続を終了する
URLバーにURLを入力してEnterを押してから、Webページが表示されるまでのコンマ数秒の間に、この全ステップが実行されている。
高校情報Ⅰ・ITパスポートでよく出る問題パターン
📌 要点:試験では「各層の名前と役割」「どのプロトコルが何層か」「TCP/IPモデルとOSIモデルの対応」「カプセル化の順番」が頻出。7層の名前は語呂合わせで覚えると効率的。
頻出パターン①:層の名前と役割の対応
Q. IPアドレスを使ってデータを届ける経路を決めるのはOSI参照モデルの何層か?
A. 第3層(ネットワーク層)
頻出パターン②:プロトコルと層の対応
Q. 以下のプロトコルをOSI参照モデルの層と対応させよ
HTTP / TCP / IP / Ethernet
A. HTTP → 第7層(アプリケーション層)
TCP → 第4層(トランスポート層)
IP → 第3層(ネットワーク層)
Ethernet → 第2層(データリンク層)
頻出パターン③:TCPとUDPの使い分け
Q. 動画のライブ配信に向いているトランスポート層のプロトコルはどちらか?
A. UDP(少々パケットが届かなくても止まらずに送り続けることが優先)
※ ファイルダウンロードやWebページ表示はTCPを使う
7層の名前を覚える語呂合わせ:
「アプ・プレ・セッ・トラ・ネッ・デー・ぶつ」
(アプリケーション・プレゼンテーション・セッション・
トランスポート・ネットワーク・データリンク・物理)
FAQ
- QOSI参照モデルは実際のシステムで使われていますか?
- A
OSIモデル自体はあくまで「整理・説明のための参照モデル」で、実際のインターネットはTCP/IPモデルで動いています。
ただしOSIモデルは「各層の役割の分担」を説明する際の共通言語として、エンジニアの間で今も広く使われています。試験でも「考え方を理解する枠組み」として出題されます。
- Q第5層(セッション層)と第6層(プレゼンテーション層)はどんなプロトコルがありますか?
- A
実際のTCP/IPでは第5〜7層はまとめて「アプリケーション層」として扱います。
TLS(暗号化)がプレゼンテーション層相当の機能を担い、セッション管理はTCPが一部担当します。OSIモデルで個別のプロトコルが対応するわけではなく、現実の実装では境界が曖昧なことを覚えておいてください。
- Qポート番号は何層の話ですか?
- A
第4層(トランスポート層)の話です。ポート番号はTCP/UDPヘッダーに含まれ、「どのアプリケーション(サービス)への通信か」を識別します。HTTPは80番、HTTPSは443番、FTPは21番といった「ウェルノウンポート」が決まっています。
- QWi-FiとEthernetの違いは何層の話ですか?
- A
第1層(物理層)と第2層(データリンク層)の話です。物理的な伝送手段(電波か有線ケーブルか)が第1層の違い、MACアドレスの管理方法などが第2層の違いに対応します。第3層以上(IPアドレスやHTTPなど)はWi-FiでもEthernetでも変わりません。
- QIPアドレスとMACアドレスの違いは何ですか?
- A
IPアドレスは第3層(ネットワーク層)で使われる「インターネット上の住所」で、ネットワークをまたいで届けるための宛先です。MACアドレスは第2層(データリンク層)で使われる「機器固有の識別番号」で、同じネットワーク内での届け先です。手紙の比喩では、IPアドレスが「東京都〇〇区」という住所、MACアドレスが「101号室の田中さん」という具体的な受取人に近いです。
- Q「3ウェイハンドシェイク」とは何ですか?
- A
TCPで接続を確立するときの3回のやり取りです。①送信側が「接続していいですか?(SYN)」→②受信側が「いいですよ、そちらも準備できましたか?(SYN-ACK)」→③送信側が「準備できました(ACK)」というやり取りで、双方が通信の準備完了を確認します。
まとめ
- OSI参照モデルは通信を7つの層(役割)に分けた設計思想。手紙を封筒→袋→宅配箱と包み込む構造そのもの
- 実際のインターネットはTCP/IPの4層モデルで動いている(OSIの第5〜7層がまとめてアプリケーション層)
- データを送るとき上の層から下へ包み込み(カプセル化)、受け取るとき下から上へ開封する
- 第4層のTCPは確実な配送(ファイル転送・Web)、UDPは速度優先(動画配信・ゲーム)
- URLにアクセスしてページが表示されるまでにDNS解決・TCP接続・TLS・HTTPの4ステップが走る
「通信の仕組みは複雑」というイメージがあるが、根っこは「役割ごとに包み込んで送り、逆順で開封する」という単純な構造だ。宅配便の仕組みと同じように、それぞれの担当が自分の仕事だけをきちんとやることで、複雑な通信が実現されている。
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