情シスは何もしていない、はホントか?|現場担当者が両方の立場で答える

情シスは何もしていない、はホントか?現場担当者が答える トラブル解消
【alt属性案】情シス対応が遅い理由を解説するイラスト

「情シスって、何もしてくれない」

この言葉を、情シス担当として何度聞いたかわからない。廊下ですれ違いざまに、飲み会の席で、退職者のアンケートに。正直に言う。半分は当たっていて、半分は違う。

大企業・官公庁・医療機関で情シス部門の現場に立ってきた。ユーザーの不満も、情シス側の苦しさも、両方を間近で見てきた立場から、どちらの肩も持たずに答えてみたい。

この記事でわかること

  • 情シスの対応が遅くなる3つの構造的な理由
  • 情シス側が認めるべき「見せ方の問題」
  • ユーザーと情シス、両者が歩み寄るための具体的な一歩

情シスが「遅い」3つの構造的な理由

📌 要点:情シスが動いていないのではなく、動いていることが見えていないケースが圧倒的に多い。

理由①:設備増設は情シス単独では動けない

「Wi-Fiの電波が弱いからアクセスポイントを増やしてほしい」。これ、情シスが即日対応できると思っている人は多い。実際は違う。

設備の増設には、おおむね以下のプロセスが必要だ。

ステップ内容主な関係者
1. 現状調査電波測定・機器選定情シス
2. 予算申請費用見積もり・稟議書作成情シス・上長
3. 承認部門長・経営層の決裁上長・経営層
4. 調達発注・納品待ち情シス・ベンダー
5. 設置・設定機器取り付け・ネットワーク設定情シス・業者
6. テスト・展開動作確認・周知情シス

実際に経験したケースを話す。あるフロアからWi-Fiが繋がりにくいという依頼を受け、翌日から現状調査を始めた。電波測定・機器選定・見積もり取得まで3日で終わらせ、稟議書を提出した。ところが承認が下りるまでに2週間かかり、その間に「情シスは何もしていない」という声が広まっていた。

情シスは初日から動いている。ただ、承認待ちや調達期間は情シスにはどうにもできない。それが「何もしていない」に見える構造だ。

理由②:目に見えないものの調査は「再現待ち」が必要

「Wi-Fiが時々切れる」「ネットワークが遅い気がする」——この種の相談が一番やっかいだ。

断続的な障害は、情シスが現場に行ったときに限って症状が出ない。「再現しない障害は調査できない」というのが現実で、ログを仕掛けて記録を取り、次に発生したときのデータを待つしかない。その間、情シスはパケットキャプチャの設定をしたり、電波強度のログを取り続けたり、ルーターのイベントログを解析したりしている。

ユーザーから見ると「連絡したのに何も変わらない」という状態に見える。でも情シスは裏で動いている。「調べています」という一言と、何を調べているかの説明がなかった情シス側の問題でもあるのだが、それは後述する。

Wi-Fiトラブルの原因の切り分け方についてはWi-Fiが繋がらない・切れる・遅い完全解決ガイドでも詳しく解説しているので、ユーザー側でできることを先に試しておくと情シスの調査が大幅に絞り込めて助かる。

理由③:AD設定やアカウント管理は年度末・異動期に集中する

3月末から4月にかけて、情シス部門は嵐の中にいる。

退職者のアカウント削除・権限剥奪、新入社員のPC調達・セットアップ・アカウント作成、異動者の権限変更——これが数十人・数百人規模で同時に発生する。Active Directoryの設定、メールアカウントの作成、各種システムへのアクセス権付与、端末の初期化と再設定。一つひとつは数分の作業でも、積み重なれば膨大な量になる。

この時期に「プリンターが繋がらない」「パスワードを忘れた」という個別トラブルの優先度が下がるのは、悪意ではなく純粋に物量の問題だ。1人情シスの環境では、この時期に残業が100時間を超えることも珍しくない。


情シス側が認めるべき「見せ方の問題」

📌 要点:構造的な理由は本物だ。でも「見えない仕事を見せる努力」が足りなかったのも、また事実だ。

ここは情シス経験者として、正直に認めなければならない部分がある。

「対応中」の一言が言えていなかった

依頼を受けて動き始めても、進捗を伝えないまま数日が過ぎることがあった。情シス側は「今調べている」「承認待ち」という状態を把握しているが、依頼したユーザーには何も見えていない。「返事がない=何もしていない」に見えるのは当然だ。

実際、かつて自分自身が調査に集中するあまり進捗報告を省き、後になって「てっきり忘れられたと思っていた」と言われたことがある。動いていても伝えなければ、動いていないのと同じだ。

優先順位の基準を開示していなかった

情シスは複数の依頼を同時に抱えており、優先順位をつけて動いている。その基準——「業務が止まる障害は最優先」「設備増設は計画対応」「個別の使い方相談は後回し」——をユーザーに説明していないことが多かった。

基準を知らないユーザーから見ると、「自分の依頼だけ後回しにされている」と感じるのは無理もない。

「完了しました」の報告を省いていた

対応が完了しても、報告なしで終わることがあった。ユーザーが自分で気づいて「直ってる」と思うだけで、情シスが何をしたかは伝わらない。見えない仕事は、完了しても見えないままだ。


ユーザー側が知っておくと助かること

📌 要点:情シスへの伝え方を変えるだけで、対応の優先度と速度が変わることがある。

情シスに伝えるべき4つの情報

情シスが原因を特定するために必要な情報は決まっている。この4点を最初から伝えると、調査の時間が大幅に短縮される。

① いつから症状が出ているか
   (「今朝から」「昨日の午後から」など具体的に)

② どの端末・どの環境で起きているか
   (PC名・機種・場所・OSバージョンなど)

③ 自分だけか、他の人も同じ症状か
   (「隣の席の人は普通に使えている」など)

④ 業務への影響度
   (「今日中に必要」「急ぎではないが不便」など)

特に④が重要だ。情シスは優先順位で動いている。「急ぎではないけど一応」と「今日の14時に役員プレゼンがあって絶対に必要」では、対応の優先度がまったく違う。緊急度を正直に伝えていい。遠慮して言わないと、後回しになる可能性がある。

自分で試せることを先にやっておく

再起動・機内モードの確認・別のケーブルに差し替えるといった基本的な対処を先に試し、「再起動は確認済みです」と伝えると、情シスが最初からより深い原因の調査に集中できる。「何も試していない状態」で連絡が来ると、まず基本確認から始めるため時間がかかる。

パスワードの問題については「パスワードの使い回し」を今すぐ自分に許しなさいでも触れているように、セキュリティと利便性のバランスは情シスも悩んでいる問題だ。制限が多い場合には理由があることも知っておいてほしい。


情シスとうまく付き合うための現実的な一歩

📌 要点:情シスは敵ではない。リソースが足りていないチームメンバーだと思うと、関係が変わる。

情シスの見えていない仕事を示す氷山図

情シスが日常的にやっている仕事の多くは、ユーザーの目には見えない。

見えている仕事見えていない仕事
PC・プリンターのトラブル対応サーバー・ネットワークの24時間監視
パスワードリセットセキュリティパッチの適用管理
新しいソフトのインストールウイルス・不審通信のログ監視
端末の設定ライセンス管理・棚卸し・更新手続き
機器の調達対応バックアップの定期確認・復元テスト
ベンダー対応・保守契約の管理
社内規定・セキュリティポリシーの整備

氷山の上が見えている仕事、下が見えていない仕事だとすると、ユーザーが見えているのは水面上のほんの一部だ。サーバーが落ちないのも、ランサムウェアに感染しないのも、誰かが裏で管理し続けているからだ。それが情シスの仕事の大部分を占めている。

「対応が遅い」と感じたときの建設的な伝え方

「なんで遅いんですか」より「いつ頃対応いただけますか」のほうが、情シスは動きやすい。前者は責められている印象を受け、後者は優先度の確認として受け取れる。

「今週中に必要です」という期限を伝えることで、情シス側も優先度を上げる判断がしやすくなる。感情的なやり取りより、具体的な情報のほうが問題解決を早める。

情シスへの効果的な伝え方チェックリスト

よくある質問

Q
情シスへの依頼はメールとチャット、どちらが早く対応してもらえる?
A

これは職場の情シスの運用方針によるが、一般的にはチャット(TeamsやSlack)のほうが即時性が高い。ただし記録に残す必要がある依頼(設備増設・権限変更など)はメールやチケットシステムのほうが確実だ。緊急の場合は電話が最も早い。職場の情シスがどのチャンネルを優先しているか確認しておくと、いざというときに助かる。


Q
情シスに依頼したのに1週間以上連絡がない。どうすればいい?
A

まず一度、進捗確認の連絡を入れてみよう。「先日依頼した件、現在の状況を教えていただけますか」と一言添えるだけでよい。それでも反応がない場合は、上長を通じて確認してもらうことも一つの手だ。
ただしその前に、依頼が正しく届いているか(メールが迷惑フォルダに入っていないかなど)の確認も忘れずに。

Q
「それは情シスの担当外です」と言われた。どこに相談すればいい?
A

情シスが対応できる範囲は職場によって異なる。業務システム(会計・人事・販売管理など)はベンダーや業務部門が窓口のケースが多く、個人のスマートフォンや私物PCは対象外のことがほとんどだ。
「担当外」と言われたら、誰に相談すべきかを情シスに聞いてみると道が開ける場合がある。

Q
情シスが少人数(1〜2人)の会社ではどう対応すればいい?
A

少人数の情シスは、インフラ管理・セキュリティ・ヘルプデスク・調達をほぼ一人でこなしている。
緊急度の高い依頼は明示的に伝え、軽微な問題は自分で調べて解決する習慣をつけることが現実的だ。「情シスが忙しいなら自分で調べよう」という姿勢が、結果的に情シスとの関係を良くする。

Q
情シス担当者が「PEBKAC(ペブカック)」という言葉を使っていた。何のこと?
A

「Problem Exists Between Keyboard And Chair(問題はキーボードと椅子の間にある)」の略で、操作する人間側に問題があるという意味のIT業界の内輪言葉だ。
悪意のある使い方をする担当者もいるが、本来は「人間がミスをするのは当然」という前提で設計すべきだという意味も含んでいる。詳しくはPEBKACの意味と対策で解説している。


まとめ

  • 情シスが遅い理由は3つ:設備増設の多段階承認・目に見えない障害の再現待ち・繁忙期の作業集中
  • 情シス側の問題も認める:進捗報告の不足・優先基準の非開示・完了報告の省略
  • ユーザーが伝えるべき4点:いつから・どの端末・他の人も同じか・緊急度
  • 基本対処を先に試す:再起動・設定確認済みであることを伝えると調査が早くなる
  • 見えていない仕事が多い:監視・パッチ管理・ライセンス管理は24時間続いている
  • 期限を具体的に伝える:「今週中に必要」は遠慮せずに伝えていい

「情シスは何もしていない」と「何でこんなに遅いんだ」——どちらの声も、22年間ずっと聞いてきた。お互いが相手の見えていない部分を少しだけ想像できると、職場のITトラブルはもう少しスムーズに解決できるようになる。情シスはあなたの仕事の敵ではなく、同じ職場でシステムを守っている人間だ。そのことが伝われば、この記事を書いた意味がある。


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