AI導入は「お試し」の時期を過ぎ、すでに「具体的な成果」を競うフェーズに入りました。日本のデジタル庁やイギリスの政府機関といった、民間以上に「硬い」組織が、実は今、驚くべきスピードでAIによる時間創出に成功していることをご存知でしょうか?
本記事では、デジタル庁の内製ツール「ゲン内」の活用実態や、イギリス政府がCopilot導入で叩き出した「1.3時間削減」という衝撃のレポートを徹底解説。現場で浮き彫りになった「利用の二極化」や、逆に手間が増える「逆効果タスク」の正体など、組織と個人がAI時代を生き抜くための「正解」を読み解きます。
1. デジタル庁の「ゲン内」:職員の8割が動き出した行政DXのリアル
日本のデジタル庁では、独自の内製AI利用環境「ゲン内(げんない)」を運用しています。全職員約1200人のうち約950人、つまり約8割がすでに実務で活用しているという事実は、DX担当者にとって無視できない数字です。
AIを「セカンドオピニオン」にする賢い使い方
現場の職員からは、非常に示唆に富む使い方が報告されています。
「AIを切り替えて同じ質問をし、回答が一番良いAIで継続できる使い方が便利」
これは、ChatGPTで大枠を作り、Geminiでミスを拾うといった「AIのセカンドオピニオン」的な活用です。精度の求められる行政の現場において、複数のAIを比較検討する姿勢は、ハルシネーション(誤情報)への最も現実的な対抗策と言えるでしょう。
事務職を救う「VBAマクロ」の自動生成
また、ExcelのVBAマクロ作成をAIに任せることで、これまで数時間かかっていた集計作業を数分に短縮している事例も。議事録の要約や国会答弁の下書き作成など、AIはもはや「頼れる事務官」として定着し始めています。
2. 英政府の衝撃データ:資料作成「1.3時間削減」の真実
次に、イギリスのビジネス貿易省が行った「Microsoft 365 Copilot」の導入試験を見てみましょう。ここで示されたのは、単なる「満足度」ではなく、業務コストが劇的に圧縮された証拠となる数値です。
- 資料作成: 1タスクあたり平均1.3時間の削減
- 調査タスク: 1タスクあたり平均0.8時間の削減
既存のオフィス製品にAIが溶け込むことで、ドキュメント作成にかかるコストが根底から覆されています。ここで重要なのは、1.3時間浮いたこと以上に、その時間を「人間にしかできない高度な政策立案や市民対応」に割けるようになったという、業務の質的変化です。
3. 「時短」のつもりが「手間」を増やす? 二極化と逆効果タスクの罠
一方で、両国の報告書からは共通の「壁」も鮮明になりました。
活用頻度の「二極化」という深刻な格差
デジタル庁では、100回以上使いこなすヘビーユーザーがいる一方で、5回未満しか使わない層も一定数存在します。この差は単純なITリテラシーではなく、「AIに何を頼めばいいか」という業務切り出しスキルの差に他なりません。
AIが苦手な「逆効果タスク」
イギリスの報告では、AIを使うことで逆に時間がかかるタスクも明記されました。
- スケジュール調整
- 資料用の画像生成
正直、これらは現時点では人間が判断したり既存の画像を探したりする方が早いです。AIは万能ではありません。「AIは誤った回答(ハルシネーション)を出すもの」だとドライに割り切り、得意なことだけを任せる付き合い方が、組織導入を成功させる唯一のルートです。
4. AIを「使う」から「溶け込ませる」へ。定着を阻む壁の超え方
組織にAIを根付かせるためには、個人の努力に頼る段階から卒業する必要があります。そこで提案されているのが、以下の2つのアプローチです。
- ナレッジ共有の文化: 「専用の社内チャットを作って、部署を超えてAIの成功事例と失敗事例を共有する体制を整える」こと。他人の失敗こそが、組織全体の学習速度を上げます。
- 意識させない自動化システム:
「人間が意識的にAIを使うのではなく、業務フローの中にAIが組み込まれている状態」を目指すこと。例えば、書類を保存すれば裏側で自動的に校正が走るといった設計にすれば、リテラシーに関係なく全員がAIの恩恵を受けられます。
OpenAIも2030年に向けて1000万人のAIスキル認定を目指すなど、動きを加速させています。今後、「AIを扱えるスキルがあるかないか」が採用やキャリアを左右するのは間違いありません。
まとめ
この記事をまとめると…
- デジタル庁の「ゲン内」は職員の約8割に普及。複数のAIを使い分け、VBA作成などで実務に直結する成果を上げている。
- イギリス政府の事例では、Copilot導入で資料作成時間を平均1.3時間短縮。既存ツールへのAI統合が強力な時短武器になることが証明された。
- 組織導入の共通課題は「利用の二極化」。対策として、成功・失敗事例の共有や、AIを意識させない「自動ワークフロー」への組み込みが有効である。
- AIが得意なこと(要約、コード生成)と苦手なこと(調整、正確な画像)を見極め、人間が最終チェックを行うサポート体制は不可欠。
- OpenAIが進める認定制度や求人プラットフォームの整備により、AIスキルは今後のキャリアにおける決定的な「格差」の要因となる。
配信元情報
番組名:耳で学ぶAIロボシンク
タイトル:デジタル庁とイギリスの政府機関はどのようにAIを活用しているのか
配信日:2025-09-16


