あなたのNotionが「ゴミ箱」になる理由。ツールの都合に思考を売った“悲しいモンスター”への処方箋

AI・テクノロジー

せっかく取ったメモが後で見返せない、整理がつかなくて結局放置……そんな経験はありませんか?「もっと画期的な整理術があるはずだ」「自分に合うツールが見つかっていないだけだ」と新しいアプリを渡り歩く前に、少しだけ立ち止まって考えてみてください。

実はその失敗、あなたの整理センスや根気がないからではなく、情報の「設計図」が根本から間違っているせいかもしれません。

今回は、1人の「31歳(自称27歳)」が作ったおぞましい読書メモを反面教師に、コンピュータサイエンスの真髄である「データベース設計」の極意を学びます。ツールに使われるのではなく、ツールを使いこなすための思考法——。世界を正しく観察し、情報の秩序を取り戻すための旅を始めましょう。

31歳の読書メモが「おぞましい」と言われた理由。タブ分けという名の罠

今回の題材は、聞き手の水野さんがGoogleスプレッドシートで作成した「辞書通読メモ」です。一見、見出し語や意味が整然と並んでいるように見えますが、そこにはデータベースのプロが絶句する、おぞましい設計上の欠陥がありました。

それは、「知らなかった語」「語釈が面白い語」といった、情報の性質ごとにシート(タブ)を物理的に分けて管理していたことです。

「世界の見方間違えてるなっていうね、この概念設計が失敗してるっていうのが水野さんの一番の問題。」

この設計の何が問題なのでしょうか?例えば、「語釈が面白く、かつ知らなかった語」が現れた場面を想像してみてください。水野さんは、両方のシートに同じ内容をコピペして書き込まなければなりません。これは単なる手間の問題ではありません。もし後で意味の誤りに気づいて修正する場合、すべてのシートを漏れなく直さなければならず、情報の整合性が一瞬で崩壊してしまいます。

これは辞書通読に限った話ではありません。例えば、仕事のプロジェクト管理で「A社用シート」「B社用シート」とタブを分けているあなた。一見整理されているように見えますが、全社の進捗を横串で確認したいとき、地獄を見ることになりませんか?情報の性質ごとに場所を分けてしまうという「物理的な分割」こそが、情報のカオスを生む元凶なのです。

「概念設計」をサボると世界の見方が歪められる。悲しいモンスターの正体

データベースを作成し、情報を整理するプロセスには、大きく分けて2つの不可欠なステップがあります。

  1. 概念設計: ツールを一切忘れて、現実世界がどうなっているかを正しく観察し、情報の「モノ」と「つながり」を描くステップ。
  2. 論理設計: NotionやExcelといった具体的なツールの機能に合わせて、どう実装するかを決めるステップ。

水野さんの失敗は、最も重要な「概念設計」を完全にスキップし、いきなり「スプレッドシートにはタブという機能があるから、それで分けよう」と、ツールの都合を優先した論理設計に飛びついたことにあります。

「論理設計に引っ張られた結果概念設計が歪んでしまった、世界の見方がスプレッドシートのせいで歪められてしまった悲しいモンスターなんですよ。」

本来、この世界には「単語」という確固たる実体があり、そこに「意味」や「面白さ」といった性質(属性)が紐づいているのが正しい姿です。しかし、ツールの機能に引きずられると、現実の捉え方までが歪んでしまいます。エンジニアの世界では、このようなエレガントになりきれない、くだらぬ力技の設計を「エレファントな設計」と呼び、忌み嫌います。

実際のところ、私たちは無意識にツールの奴隷になっています。スプレッドシートを開けば「列と行」で考え、Notionを開けば「ギャラリービュー」で見栄えを整えたくなる。でも、本当の知性はツールの外側にあります。まずはPCを閉じ、ノートを広げて「この情報の実体は何だ?」と自分に問いかける。この泥臭い作業こそが、最もエレガントなデータベースへの近道なのです。

Notionで実現する「エレガントな」一元管理。タグとフィルタの魔法

ツールの都合に歪められた世界を救い、概念設計に基づいた正しい秩序を取り戻す。そのための最強の処方箋が「Notion」です。Notionのデータベース機能は、まさにリレーショナルデータベースの思想を個人レベルで扱えるように設計されています。

エレガントな整理の正解は、すべての情報を一つの大きなテーブル(表)に集約することです。

「性質ごとに場所を分けるのではなく、一つの場所に置いて『属性』をつける。これが基本です。」

Notionなら、すべての単語を一つのデータベースに入れ、「知らなかった」「語釈が面白い」といった情報を「マルチセレクト(タグ)」として付与します。データは常に一箇所に存在(シングルソースオブトゥルース:信頼できる唯一の情報源)しつつ、フィルタ機能を使えば、あなたの見たい切り口でいつでも情報を引き出せます。

  • 「知らなかった語」だけを抽出して表示する。
  • 「語釈が面白い」かつ「知らなかった」語を瞬時に一覧する。

このように、データそのものは動かさず、表示だけを変える「ビュー」の考え方を身につければ、情報の重複は消え、メンテナンスの手間は劇的に減少します。「概念設計の失敗を避ける最大の方策がノーションであると言えるかもしれない」という言葉通り、Notionは私たちの思考の歪みを正してくれる鏡のような存在なのです。

エンジニアが烈火のごとく怒る「カッコ書き」問題

最後に、データベースを運用する上で、絶対にやってはいけない禁忌(タブー)について触れておきましょう。見出し語のすぐ横に、カッコ書きで「(読み仮名)」や「(注釈)」を入力すること。これは「烈火のごとく怒ります」と言われるほど、データとしての価値を破壊する行為です。

「見出し語の後ろにカッコつけますか?……絶対やめてください。表である意味がなくなります。」

データ整理の鉄則は「1つのセルには1つの情報」です。1つのセルの中に複数の意味を詰め込むと、コンピュータはそれを一つの「固まり」として認識してしまいます。結果として、読み仮名での検索も、五十音順の並び替え(ソート)も不可能になります。

エンジニアがここで怒るのは、決して意地悪ではありません。カッコ書き一つで、データが「機械で判読できない死体」になるのが耐えられないのです。読み仮名が必要なら、必ず「読み仮名用」の独立した列(プロパティ)を新しく作ってください。この「セルの純度」を守ることこそが、データを一生モノの資産に変えるための、最小にして最強のルールなのです。

まとめ

この記事をまとめると…

  • タブ分けの罠を卒業する: 情報を場所で分けるのではなく、1つの表に集約し、属性(タグ)で管理するのが正しい整理術。
  • 概念設計こそがすべて: ツールを触る前に、現実世界の構造を正しく観察し、図に起こす習慣をつける。
  • Notionを「ビュー」で使いこなす: フィルタ機能を駆使し、1つのデータベースから多様な切り口を引き出す。
  • 1セル1情報の原則を守る: カッコ書きでの情報追加は、データの再利用性を破壊する「禁じ手」である。

「正直なところ、シートを分けたほうがその瞬間は楽に感じます。でも、その小さな『楽』が、1ヶ月後のあなたを情報の迷路に閉じ込めることになるんです。」

今日からあなたのNotionを、ツールの都合に歪められた「悲しいモンスター」たちの掃き溜めから、美しく構造化された知の資産へと進化させましょう。

配信元

番組名:ゆるコンピュータ科学ラジオ
タイトル:失敗メモはなぜ生まれるか?世界の見方をツールに歪められるから。【データベース2】#88
配信日:2023-09-03

タイトルとURLをコピーしました