AIが現場の仕事を奪うのではなく、現場がAIを「創る」。移動が「所有」から「超低コストなサービス」へ変わる。そんな輝かしい進化のすぐ隣で、57年前の壁が音を立てて崩れる現実があります。
2025年、私たちが直面している「進化の加速」と、放置され続けた「物理的リスク」。ライオン、テスラ、そして杉並の事故という3つのトピックから、今私たちが向き合うべき「正解」を浮き彫りにします。
1. エリートの独占は終わる。ライオンが進める「全社員AI開発者化」100人の野心
ライオンが進める「スマートワーク」の本質は、単なるAI導入ではありません。「現場の人間を開発者にしてしまう」という、組織のOSを書き換える挑戦です。
特筆すべきは、非エンジニアのビジネス部門がノーコードツール「Dify」を使い、自らAIエージェントを構築している点。2025年度内に100人の開発者育成を目指すこの動きは、AIの民主化を象徴しています。
正直、ツールを入れるだけで現場がアプリを作れるほど甘くはありません。ライオンが成功しているのは、「やりすぎ」「属人化」を徹底的に洗い出す「業務整理」という泥臭い前工程を完遂したからです。これこそが、DXを成功させる唯一の黄金律と言えるでしょう。
2. バスより安いテスラ「サイバーキャブ」。2026年、移動の概念が崩壊する
モビリティの未来において、イーロン・マスクが放った一矢はあまりに破壊的です。2026年量産開始予定のロボタクシー「サイバーキャブ」が目指すのは、1マイル(約1.6km)あたり30〜40セントという驚異の低コスト。
日本円に換算すれば、1.6kmで約50〜60円。現在の日本のタクシー初乗り運賃があれば、15km以上走れてしまう計算です。
これを支えるのが、車両周囲の認識から判断までを一つのAIで行う「E2E(エンドツーエンド)技術」です。高精度地図に依存しないこの技術は、展開スピードにおいて先行する他社を圧倒します。既存の交通網を根底から覆す「移動の価格破壊」は、もうすぐそこまで来ています。
3. 杉並の擁壁崩壊が突きつけた、40年の警告と「先送り」の末路
テクノロジーが未来を拓く一方で、私たちは足元の物理的な現実を直視しなければなりません。2025年9月、東京・杉並区で起きた築57年の擁壁崩壊。住宅が倒壊する悲劇を防ぐチャンスは、過去に何度もあったはずでした。
杉並区は40年も前から安全対策を指導してきましたが、抜本的な対策はとられませんでした。
「亀裂にモルタルを塗る。それは、爆発寸前の風船にテープを貼るようなものでした。」
専門家が指摘する「度圧(どあつ)」による内部崩壊は、目に見える傷を埋めるだけの「場当たり的な補修」では防げなかったのです。AIが未来を予測する時代になっても、足元にある「物理的な警告」を無視し続ければ、悲劇は繰り返されます。
まとめ
この記事をまとめると…
- ライオンは「Dify」を活用し、現場の社員100人をAI開発者に育成。徹底した業務整理を前提とした「AIの民主化」で生産性を劇的に高めている。
- テスラは2026年にロボタクシー「サイバーキャブ」を量産予定。E2E技術による超低コスト化で、公共交通機関を凌駕する移動革命を狙っている。
- 杉並の擁壁崩壊事故は、40年にわたる行政指導と「場当たり的な補修」の限界を露呈させた。度圧による破壊は、抜本的な対策なしには防げない。
- 私たちは今、最新のAIを使いこなす知恵と、老朽化するインフラという物理的リスクに誠実に向き合う責任、その両輪を問われている。
刺さるフレーズ
- 「廃止できる業務は廃止、シンプルにできるものはシンプルに、と無駄がない形にした上で、自動化を進める」
- 「車両周囲の認識や判断、操作のすべてにAIを使うE2E、エンド2エンド技術」
- 「運行コストが1マイルあたり30から40セントになると試算し、バスなどに比べて大幅にコストを下げられる」
- 「所有者は1989年以降、モルタルによる亀裂の補修を複数回実施したものの、抜本的な対策は講じてきませんでした」
配信元情報
番組名:テクノロジーFLASH
タイトル:2025-10-26_10_27週:ライオン、Dify活用のAIエージェント開発者を100人育成へ/テスラがロボタクシー量産へ/東京・杉並の擁壁崩壊、かさ上げした盛り土が原因か
配信日:2025-10-27


