企業が生成AIをどのように業務へ導入し、成果につなげているのか。「AIを導入して本当に効率化するのか?」「他社はどう動いているのか?」。そんなDX担当者や経営層のリアルな悩みに答えるべく、今回は「明暗」がはっきり分かれた最新事例を深掘りします。
なぜマクドナルドはAI導入を中止し、ウェンディーズは挑戦を続けているのか。本記事では外食、医療、メディアといった業界横断の事例を通じて、「2025年、企業がAIとどう距離を置くべきか」という、導入の成否を分ける判断軸を整理します。
1. なぜ明暗が分かれたのか?マクドナルド撤退とウェンディーズ継続の「境界線」
企業がAIを導入する際、最初に検討対象になりやすいのが「顧客対応」の自動化です。ここで、世界的な2大チェーンの判断が真っ二つに分かれました。
ウェンディーズの挑戦とマクドナルドの「戦略的撤退」
アメリカのウェンディーズは、一部店舗でAI音声によるドライブスルー注文受付「ウェンディーズフレッシュAI」の実証実験を継続しています。一方、マクドナルドも同様のAI受付を開発していましたが、2024年6月にプロジェクトを終了。事実上の撤退を選びました。
マクドナルドが中止した最大の理由は、注文ミスや不自然な応答により、ユーザーが困惑する様子がSNSで拡散・炎上してしまったことです。スピードと正確性が命のドライブスルーでは、AIのわずかな誤認識が「致命的な顧客ストレス」に直結してしまいました。
ここで重要なのは、マクドナルドが技術を諦めたのではなく、「現時点のAIではブランド体験を損なうリスクの方が高い」と冷静に判断したことです。ブランドを守るための撤退という視点は、攻めの導入と同じくらい価値のある決断と言えます。
精度がブランド体験を左右する
ウェンディーズも全面導入には至っておらず、慎重に実証を続けています。顧客対応領域でのAI導入は、「人間なら防げたはずの柔軟な対応」ができないことが、そのまま顧客離れに直結する最も難易度の高い分野です。
ここがポイント👌
ウェンディーズは実証を続け、マクドナルドは中止を選びました。顧客対応におけるAI導入では、技術の凄さよりも「ブランドの信頼性と顧客体験を維持できるか」という境界線を見極めることが成否を分ける決定的な要素になります。
2. 応答ストレス解消と文書作成:生成AIが「人が嫌がる業務」を代替する
対面業務でのAI活用が「リスク」を伴う一方、電話対応や文書作成といったオフィス業務では、生成AIは現場の「面倒くさい」を直接解消する強力な武器になっています。
「じっと待つ」ストレスをAIでなくす
従来のプッシュフォン式自動案内に対し、最新のAI会話機能は格段に進化しています。問い合わせの内容を機械音声が読み上げるまでじっと電話口で待たされるのは、正直誰にとっても苦痛ですよね。
生成AIによる受付なら、自然な会話で要件を把握し、適切な部署へ要約付きで引き継ぐことが可能です。コールセンターは人手不足が深刻な領域。AIが最初の窓口を担い、複雑なケースのみを人間が担当する分業は、すでに「現実的な解」となっています。
専門分野で進む「忘れない優秀な秘書」の活用
- NTTデータ: X(旧Twitter)の過去10年以上のデータからトレンドの予兆を自動発見。
- 京都大学医学部付属病院: 医師の長時間労働を救うべく、医療文書作成を支援する「カクテルAI」を開発。
実際のところ、これらは「24時間365日、過去の全データを記憶している優秀な秘書」を雇うようなものです。こうした「情報の整理・抽出」であれば、対人トラブルのリスクを最小限に抑えつつ、最大限のメリットを享受できます。
ここがポイント👌
生成AIは、電話受付や文書作成といった「定型業務」において、業務効率を劇的に改善します。最近ではセキュリティを考慮し、企業独自のデータを学習させた「社内専用AI」を構築する動きが、導入のスタンダードになりつつあります。
3. メディア業界に広がる「情報キュレーション」の進化
メディア企業は、AIを活用して「読者が知りたい情報」にたどり着くまでの時間を圧倒的に短縮し始めています。
- Forbes: 過去記事から情報をキュレーションして回答するAI「Adelaide」を開発。
- Spotify: 「30代でR&B好き、ホームパーティー用」といったプロンプトでプレイリストを自動生成。
- NotebookLM / Notebook LAMA: 資料を読み込ませるだけで、AI同士がその内容について議論するPodcast音声を生成。
AIの役割は、単なる文章作成から「情報の高度な再構成」へとシフトしています。
ここがポイント👌
メディア企業はAIを使って情報提供の質を高め、ユーザーが「自分にぴったりのコンテンツ」に出会える体験を加速させています。
4. AI導入の成功と失敗を分ける判断軸とは
マクドナルドの事例から学べるのは、AI導入そのものを目的にしてはいけないということです。
DX担当者が持つべき3つの判断軸
「AIを導入して何を達成したいのか。目的達成のために、あえて導入しないという選択肢も立派な戦略です」。導入の可否は、以下の3つの物差しで冷静に測る必要があります。
- コスト(投資対効果): 数億円規模の全店導入か、数万円からのスモールスタートか。
- 代替リスク: 顧客対応や医療など、ミスがブランドや命に関わる領域か。
- 代替範囲: 「丸投げ」ではなく、構成案や下書きなどの「一部工程」に絞れるか。
正直なところ、倫理的な判断や企業独自の文脈に合わせた最終調整は、AIにはまだ荷が重い仕事です。ここを人間が守り抜くことで、AI導入は初めて「成果」に変わります。
ここがポイント👌
AI導入の成否は、技術力ではなく、目的に対してAIを「どこで止めるか」を見極める判断力にかかっています。
まとめ
この記事をまとめると…
- マクドナルドの撤退とウェンディーズの継続事例は、AIの精度と顧客の期待値のズレが「炎上」や「失敗」を招くことを示しています。
- 電話受付の要約や医療文書の作成など、バックオフィスにおける「生成AIを活用した業務効率化」は非常にリスクが低く、効果が出やすい領域です。
- ForbesやSpotifyのように、AIを「情報の再構成ツール」として使うことで、コンテンツの提供価値を劇的に高めることができます。
- AI導入の成功には、コスト・リスク・代替範囲を冷静に見極める必要があり、目的達成のために「あえて導入しない」という判断も不可欠です。
配信元情報
番組名:耳で学ぶAIロボシンク
タイトル:マクドナルドはなぜAIを中止したのか?ウェンディーズが続ける理由
配信日:2024-11-12


